皆さんこんにちは1995年にデビューした漫画家みなと鈴です😃
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さて、前回は他の投稿者に付けられている批評からも学ぶんだよー、ということをお伝えしましたが、今回は「プロットやネームが通らない」という既に担当付きになっている投稿者のお悩みにお応えしていきたいと思います。
前回の記事を読んでみたい方はコチラ。
では行ってみましょう!
プロットは別に書かなくても良いんじゃない?
……と、いきなり同業者からは呆れられるような見出しで始めますが😅続けましょう/笑
まずプロットとは何かというと、お話の設計図です。
登場人物にはどんな人が居て、主人公はどの人でどんな問題があって、どんな出来事があって、どう解決するのか? というお話の起承転結を文章でまとめたものになります。
ネームを描いてから丸ボツになるとダメージが大きいので、まずは文章で方向性を書き出し編集者と打ち合わせをするというのが定番の流れです。
プロットは、あらすじを小説のような文章でサラッと書くだけの人もいれば、箇条書きで大きな展開だけを書き出す人、登場人物の台詞まで全てプロットで決めるシナリオタイプ、書いた本人にしか読めないメモで溢れたグチャグチャタイプもいますし、人物それぞれの動きを把握するために時間軸にそって人物の動きを表にまとめる人もいます。
つまりどう書こうが自由です。
が、担当編集者と打ち合わせる必要がある人はどんな形でもとりあえず書かねばならんと一般的には思われているものなので、「漫画の描き方」とかを検索してみると大概、プロットはやる前提なんですよね。そりゃもう「プロットやらない」なんて「あり得ない」レベルでプロットをやることが当然のように書かれています。
勿論、プロットでしっかりとストーリーを練ることが出来るならその方がいいんです。
でも……
デビュー前の人が
頭の中でネームにした時の画を想像しながら
漫画にした時のページ配分やテンポまで考えつつ
規定のページ数に収まるようなストーリーを
文章でしっかりと構築できるか………?
…って…それが出来たらプロでしょう!!
それかプロ並みにバリバリ漫画描いてて相当描き慣れた人!!
って思ってしまうんですよ。
それって
初心者がいきなりプロ級の技にチャレンジするようなもの
です。
先にも書いたように、ネームを描くというのはもの凄い労力が必要なので、ネームを書き上げてから没になったときのダメージはもの凄いものがありますし、描き上げるのに時間も掛かるので、例えばネームコンペの締め切りが迫っていたら書き直す時間が無くなってしまうかもしれません。
それでも、
プロット書いて提出して
ダメ出しされてはまたプロット書いて提出して…
なんてプロットの練習みたいなこといつまでもやってないで、
一本でも多くネームを描いてしまえ!
その方が遙かに力が付くから!
と…私は思ってるんですよ…ここだけの話ね…
漫画家にはプロットで考えるタイプとネームで考えるタイプがいる!
そもそも、プロットって自分のために書くものです。
お話の流れを確認したり、伏線を入れる所とか気がついた事があればストーリーを修正したりという作業。
ただプロでもこれが文章だと出来ないタイプもいます。
まさに私がそうです。
私の場合はそれらはネームを描きながら考えます。
頭の中に浮かんでいるシーンをネーム上でストーリーに組み立てて描いています。
でもネームの前にプロットをやるとなると、
脳内で展開されるシーン(絵)を ⇒
文章に変換 ⇒
文字に変換したものをシーン(絵)に戻す
という自分にとっては圧縮と解凍みたいに手間が増えるだけの作業というか…。
プロットやってもその通りに描けた試しもないですしね…。
そういう私みたいにストーリーを文章で構築することが苦手な人は
「私プロット苦手なんでネームで出します」
と担当さんに宣言してみましょう。
ちょっと勇気がいるかもしれませんが案外あっさり「分かりました」となったりします。
それに
読者が見るのはプロットじゃなくて
【完成した漫画】です。
それを忘れないようにね😊
プロット通りに描かれた漫画は面白いのか?
プロットやらなくてもいいんじゃね?
と思う理由はまだあって、
それは
プロット通りに描かれた漫画だからといって面白くなるわけでも、ネームが通る訳でもない。
っちゅーことです。
担当さんからOKが出たプロットだからとプロットに忠実にネームを切ると、テンポが悪くなったり、文章で考えた話の方にキャラの動きを合わせようとするとご都合のような展開になってしまったりと、あまり良いことがありません。
勿論、これはプロットが苦手な人の話ですから、自分はまず文章で考えたいんだ!と言う方はしっかりとプロットで練ってくださいね。
話を戻して。
プロット通りに描いてもネームが面白くないというのは、たとえば以下のような感じのことが起きがちだからです。
①一生懸命考えたファンタジーの世界観!の説明をプロット通りにネームにしたら漫画の冒頭が長すぎると言われた⇒テンポが悪くなった
②真っ直ぐな性格の主人公。のはずが話の辻褄を合わせるためにシーンによって真っ直ぐではない言動をしてしまっている⇒ 話の流れにキャラの方が合わせている⇒性格の矛盾
③クライマックスが全然盛り上がってない⇒起承転結のバランスが悪い
と、こんな感じにプロットに忠実にネームに起こした場合、こんなことがよく起こります。
こういうことは経験の浅い投稿者ほどありがちです。
それなりに経験のある人は勘でペース配分を考えてプロットを作り、ネームを切っているのでそこまで読みにくいものにはならないのですが…
では、どうしたらその描き慣れた人が持つ「勘」を一日でも早く身につけることが出来るのでしょうか?
漫画の「勘」を鍛えよう!おすすめはトレペ練習法!!!
テンポが悪い
単調
起承転結を意識して
などの批評を良くもらう人はトレペ練習法がおすすめです。
好きな漫画家さんの読み切り24pとか32pとかを全てコピーして、
すべてのページの絵と台詞をトレペで写し取ります。
鉛筆でなぞるだけでOKです。
(デジタルの人はスクショが撮れるならそれを透かせばいいと思いますが、アナログ・デジタルを問わず他人の作品をトレースしたものをSNS等で公開しないようにしてください。著作権侵害になる可能性があります。)
この練習法は画力向上も期待できますが、
目的はプロの「コマ運び」や
話を展開する「テンポ」を掴むことです。
1回でもやると、プロのストーリー展開の早さに驚くと思います。
読者として読んでいるだけでは、あまりに自然に読めてしまうのでそれに気がつかないのです。
昔、某編集部の編集さんがこんな事を言っていました。
「みなとさんさ~、どうして投稿作が16pとか24pとかの少ないページに設定してあるかわかる?
それはねえ、16p読めばその人に才能があるかどうか分かるからだよ」
つまり、どういうことかというと編集さんが言うには、プロが2pとか3pで描けることを素人さんが描くと10pとかになってしまうと。
だから16pという少ないページ数でもその冒頭を見れば、その人のレベルがある程度わかるということでした。
なのでこのトレペ練習法を実践してみる!という方は是非、
冒頭2ページでプロがどれだけの情報を描きんでいるか意識してみてくださいね。
描き文字も背景も全て情報ですよ
そして是非、テンポだけでなくコマ割りや、カメラワーク、演出など色んな所を意識しながら写し取ってみてください。
真似すると似た絵になってしまうからそれでは困る!と心配する方もいらっしゃると思いますが、
大丈夫です。
ちょっとやそっと写したくらいじゃ同じように描けるようにはなりません。
そして絵というものは必ずあなたの個性が出てしまいます。
だから安心して
好きな作家さんの模写をドンドンしてください。
確実にあなたの絵は模写する前よりブラッシュアップされます。
どうぞ真似をいっぱいして、ご自身の作品を今よりもワンランク上、ツーランク上へと引き上げて、夢を叶えてくださいね😃❗
次回はその読み切りの冒頭のお手本を示しながら読み切りを描いていくコツをお伝えしていきたいと思います。
では皆さんの健闘を祈ります!また来てね~😉See You!

コメント
コメント一覧 (2件)
はじめまして。
とある賞で入賞し、担当さんがついてプロットの提出を求められましたが一向に書けないため「漫画 プロットは必要なのか」で検索してこちらに辿り着きました。
私はここに書いてある通りの、脳内シーン出力派なので全てが腑に落ちました。
プロット練習で数週間を無駄にして嫌になったのと、この記事に勇気付けられてもうネームを送ってよいかと尋ねて見てもらったところ、OKをもらい大幅に話が進んだので本当に感謝しております。
絵とコマの運びで見た方が絶対に分りやすくて早いし、直しを繰り返すほど原稿の下描きに近いものになっていってその後の作業の手間も省けるはずなのに、なぜ字を書かせるのでしょうか?字でまとめる方もいらっしゃるとは思うのですが、私の場合は先にネーム(18~30p内)を書く方が早いと伝えているのでプロットを頑なに求められる理由がわかりません。
デビュー前ということもあって最近では、これはやんわりとした自主退社を求められているようなものなのかなと、不安になりつつあります。
ネームよりプロットのほうが打ち合わせ時間の短縮になるのならもうすこし頑張りたいと思いますが、もしその辺の事情をご存知であれば担当さんに不信感を抱かずに円滑な関係を保つためにも是非教えて頂きたいです。
みかんジュースさん、はじめまして(^▽^)
コメントありがとうございます。お返事が遅くなり申し訳ありません。入賞おめでとうございます。
一生懸命漫画を描いている人のために作ったブログなので、私の記事がお役にたったとのことで大変うれしく思います。
さて、ご質問の件ですが、編集者が投稿者や新人漫画家さんたちに頑なにプロット提出を求める理由は
漫画業界に昔からあるプロット→打合せ→ネーム→打合せ→下描き→チェック→原稿という定型文のような流れを疑うことなく
「それが正しい漫画制作の形」だと信じている編集者が多いからだと思います。
なぜ編集サイドにはそのような妄信があるかというと、面白い作品は1~3行程度の文でその内容を説明できるという神話があり、
例えば「巨人と人間が生死をかけて戦う話」「鬼に家族を殺された少年が仲間と共に鬼退治する話」
と書くと、もう何の作品について言っているのか推測できますよね?そのように、面白い作品、ヒットする作品は数行で説明できるといわれているのです。
ですが、考えてみてください。それはもうその作品がヒットして知っているからその簡単な説明で何の作品かわかるし、面白さもすっと理解できます。後付けなんです。
まだ何の実績もない投稿者がこの簡単な説明であらすじを持ってきても、きっと「ふーん」で終わりだと思います。
でも、定型文通りプロット→ネームという流れが正しいと思っている編集者の多くがこの文章の段階で面白そうと思わせてくれ、と思っている。
私から見るとそれは無理難題というものです。文章で面白いものでも、「面白い漫画にする力のない人」が漫画にしたら面白い漫画にはならないんです。
例えば大人気小説を、小説の通りに、小説に出て来る背景描写、小説の展開通りのエピソード、小説通りのセリフ、全て原作小説に忠実にそのまま漫画にしたら絶対に面白くなるか?
なりません。
逆に、ありふれたテーマ、ありふれた設定でも、プロ漫画家の手にかかればそこそこのクオリティに仕上がるはずです。
今までの漫画史でどれだけの学園ラブがあることか…好きな人にはすでに彼女がいた系、友達以上恋人未満系、同居系、などなど…
設定や展開が似たり寄ったりでもプロは自分の個性をセリフや絵柄などで出しながら売ってきたわけです。
ですから、まずはデビューすることが目標の投稿者や、雑誌掲載や短期連載獲得を目指す新人漫画家さんたちがまず目指した方がいいのは、
奇をてらうアイディアを出すことではなく、
「ありふれたテーマのありふれた話」をいかに読者を引きつけながら最後のページまで読ませることができるか、
その力を養うことだと思います。
それならプロットよりネームを提出して打ち合わせた方が早いし自分の力にもなりますよね。
アイディアを精査する必要はあまりありません。
ありきたりなストーリー、気の進まないテーマでも自分のカラーを出しながら描けたらプロです。
そして
他の作家とは差別化を図る、ヒット作を生みたい、そういう段階になると今まで他者にあまり描かれていない話を練る必要があり、
その段階になってようやくネタを吟味する必要が出てくるのかなあと。
私はそう思います。
次に、漫画を描く側にもプロットという段階があった方が都合がいい人達がいます。
もちろん、プロットを描いた方が展開に迷わず描けるからやっているという人もいますが、
そういう「一人でもどんどん仕事をしていけるプロフェッショナルな人たち」ではなく、
私がいうプロットという段階があった方が都合がいい人たちというのは、
プロットを書いたことで頑張ったと感じたい「だけ」の人たちです。
ネームを描くのは本当に大変です。一番面白くて、一番苦しい作業です。
だからよくいますよね、漫画家志望なのになかなか描かない人。
でもプロットとして簡単なあらすじや思い付きを書き出すだけならそこまでの労力は必要ありません。
プロットやったらなんかちょっと進んだ気になるので、今日はプロット〇本やった、とかよく目にするのだと思っていますが、
漫画にした時のテンポを考えながら頭の中でネームを切り、キャラクターの人物設定やストーリーラインを詰めて詰めてプロットを作ると、
そんなに簡単で楽な作業ではありません。
短期連載の企画なら、私だったら1本やるのに1週間はかかります。
つまり。
プロットで面白そうだったら面白い漫画になるんじゃないかと甘く考えている編集者と、
プロットを書くことでネームから逃げたい漫画家志望者や漫画家が多く存在しているため、
プロットを書くのが「あたりまえ」かのように言われているだけだとあくまでも私個人的には思っています。
ただし誤解してはいけないのは、プロットでうんと練ることを必要とするタイプの作家もまた多いということ。
プロットは必要なら書けばいいし、必要ないと思えば書かなくたっていいわけです。
そして、描いているうちにキャラクターが勝手に動き出してプロットで作ったストーリーライン通りに行かなくなったら、
キャラクターがキャラクターらしい動きをする方を選ぶことをお勧めします。
編集者と打ち合わせたのだからとプロット通りに進めようとすると、キャラクターの行動に不自然さが出てしまったり、
面白さや勢いがそこで削がれてしまったりして、せっかくキャラクターが生き生きとしだしたのにもったいないですからね。
まとめ。
ネームで担当編集者に「面白い!」「続きを読みたい!」と思わせることが出来なければ、どんなによくできたプロットを書けても意味がありません。
ですから、どうぞご自身のスタイルを作り上げてくださいね。
編集者は投稿者を遠回しにやんわりと避けるようなことは滅多にしません。本当に見込みがなければプロット提出を求められることもなく、
よそへ行くことを勧められたり、はっきりとウチでは見込みがないと言われます;
忘れないでほしいのは、編集者は漫画を描けない人である。ということ。
「なんていうか~もっとメリハリがほしいっていうか~」のように抽象的なことや
「男はもっとカッコよく、女の子はもっと可愛く描いて」
とか、そんなこと言われんでもわかっとるわ!こちとら精一杯そう思って描いとんじゃ!と言いたくなるような(笑)
そんなことしか言えない編集者であれば、その人はネームを見る力があまりない人です。
漫画編集者と言っても昨日までファッション誌にいた人とか情報誌にいた人とかが異動で漫画編集者になることは普通にあります。
そういう漫画編集としては素人みたいな人だと読者と同じような「感想」しか言えないので;
もっとロジカルに
「クライマックスでこう展開するなら前半でこう展開しておかないといけないよね?
だとしたら前半のこのシーンもこのコマもいらないから、代わりにこういうシーンを入れておかなくちゃ。はいやり直し。」
と、こんな感じでちゃんと漫画のセオリーを説明できる経験値の高い編集者が担当についてくれれば、めちゃくちゃラッキーです。
当たりがキツくてもその人のアドバイスを素直に聞いて、頑張ってついて行きましょう!
きっと、あなたの力を伸ばしてくれるはずです。
応援しています。