皆さんこんにちは1995年にデビューした漫画家みなと鈴です😃
詳しいプロフィールはコチラ。
発売中コミックスやインタビュー掲載情報などはインフォメーションをご覧くださいね。
さて起承転結についての回からかなり時間が経ってしまいましたが…
ネームについてはまだ続きます。
今回のテーマは「読みやすいネームとは?」
投稿作にありがちな読みにくさ、それを改善してスルスル読めるネームにするだけで
グッと漫画家デビューに近づけるんだよー、ということを
実際にウチのアシスタントさんが描いた投稿作のネームを元に解説して行きますね。
では行ってみましょう!いざ読みやすいネームの巻
読みにくい漫画は読み飛ばされる
漫画は皆さんもご存じのように面白いなと思うものもあれば、つまらないなと思うものもありますね。
それは個人の趣味嗜好が左右する部分なので万人が面白いと思う漫画なんて誰も描けません。
100人読んでくれた内の70人位が高評価をくれたら御の字です。
ただここで、忘れてはいけないことがあります。
それは100人最後まで読んでくれないと70人の高評価は生まれないということ。
どんなに面白いアイディアでも、読み飛ばされてしまったら面白いという評価は勿論、
つまらなかったという反応も生まれないのです。
それは投稿作も同じ。
まずは初めての読者である編集者に最後まで読んで貰わないと始まらないんです。
面白いネタだ!と思って一生懸命描いた漫画…最後まで読んで貰えなかったら悲しいですよね。
ですから初心者だけでなく中級者も、とにかくまずは読みやすい漫画を目指してください。
初めて読む人にも分かるように描いてあるか?
では読みやすい漫画にするには何に気を付けたらいいのか具体的に見ていきましょう。
以下の画像は絵と台詞を消しているので見にくくて申し訳ないんですが、ウチのアシスタントさんのネームを私が添削したものです。
(勿論本人の許可をいただいて載せております)
画像も粗く読みにくいので以下の●に赤字の添削文を一部書き出しました。
●どういうわけで?
●何を見に行きたいの?
●だれ?
●何で?
●…って誰だっけ?
●誰から誰へ送られたもの?
●小さいしどこだかわからない、出版社?新聞社?
●何のための取材だったの?
●誰?
このネームは全部で53pとボリュームがある読み切りで、その中から2ページ分ピックアップしたものです。
描いている本人はそのお話をずっと考えているので登場人物が誰だか分からないとか、キャラがなぜそんなことを言うのか分からないといったことはありません。 しかし、●に書き出した「?」なことを見ていただけると分かると思いますが、初めてこの漫画を読む人間には分からないことが一杯あります。
このネームを描いたアシスタントさんは初心者ではなく、2誌の大手雑誌で受賞経験もあり、担当編集者も付いている中級者ですし、絵も上手いので画面自体は読みにくいということはありません。ネタも斬新で描きたかった世界観も分かるし素敵な話だなと思いました。
良いところを探しながら読んでくれる担当編集者も多少意味不明な所があっても最後まで読んでくれます。
しかし、
一般の読者はこれだけ読んでて分からないことがあるともう読むのを止めてしまいます。
前に中級者はプロの思考法を心掛けるとデビューに近づけるよ、ということを書きましたが、
まさにコレなんです。
担当編集者ではなく、一般の読者にとって読みやすいものになっているか?という視点を持って描くことが出来れば、
ネタ次第という部分も勿論ありますが、何処かの雑誌でデビューが出来る可能性が上がるんじゃないかなと私は思います。
読者に分かるように描くこと=説明を増やすこと…ではない!
ただここで、分かりやすくしようと説明過多になってはいけません。
漫画は説明が多くなっては面白さがドンドン減っていってしまうからです。
例えばファンタジー作品の冒頭で思い描いていた設定を全部ことばで書いてしまったら…
謎が無い状態で読むファンタジー…つまらなくないですか?
謎は謎として描いた方が断然面白くなります。
では分かりやすく描くというのはどういうことかというと
①キャラを絞る。読み切りではせいぜい3人位。後はモブ的扱いで良し。
②「その」「それ」「あれ」「あのとき」などの言葉は多用しない。
③誰の台詞か分からなくなるようなコマ割、絵の入れ方をしない。
④建物の外観や看板など絵で情報を伝えたい場面ではそこが何処なのか分かるように描く。
⑤描き文字の使い方を考える。
意識して欲しいのはだいたい①~⑤に上げたことです。
もう少し詳しく説明すると、
①は上の添削例にも私が「誰?」とか「誰だっけ?」とか書いているように、キャラが多すぎると誰が誰だか分からなくなってしまうからです。
しかし、このネームの主要キャラは2人。なのにキャラが多すぎるとはどういうことかというと、モブでいいような雑魚キャラにいちいち名前を付けて1~2回登場させていたりするため、人物関係が分かりにくくなってしまっているのです。
またちょっとしか出てこない脇役を似たようなルックスで描いてしまうと見分けが難しくなって混乱します。
顔や髪型だけでなく、痩せている、太っている、背が高い、低いなど体型でも違いが分かるように描いた方が読者にとって分かりやすくなります。
②は、例えば台詞の中に「その気持ちが変わってしまった」とモノローグに描くなら「その」が「どんな気持ち」なのかちゃんと前のシーンなどで読者に分かるように描く必要があるのですが、それがないまま「その」と言われても読者にはどんな気持ちが変わってしまったのかよく分からないし、「あのとき」と描いてあっても回想シーンが描いてなかったりすると「あのとき」って「どのとき?」と混乱するのであまり多用しない方が良いと言うことです。
因みに回想シーンも読み切りなら多くて2回まで、回想も多すぎると過去と現在を行ったり来たりで読者が混乱します。
③はこれも結構多いのですが、例えばAというキャラクターの絵にBというキャラクターの台詞を描いてあったりすると、それがAの台詞なのかBの台詞なのか分かりにくくなるという事です。
そういう描き方がいけないと言うことでは無く、そのように絵を配置するなら台詞の内容が明らかにBのものであるとわかるでような内容にしなければなりませんし、そのシーンの前にBが話していてその続きの台詞であると分かるように描かなければなりません。
ところが投稿作などでは
B「~~~~~」
{脇役の突っ込みなどあっても無くてもいいコマ}
B「~~~~~~」(Aの顔の上にBの台詞が描いてある)
とコマとコマの間に余計なシーンを挟んでしまったり、さらにAの絵の上にBの台詞が入ってたりすると
「これ誰の台詞;?」
みたいなことになってしまう訳です。
そして誰の台詞か分からないようなシーンが多い漫画は読むのが面倒くさくなってしまいます。
④は例えば「○○堂」という看板を掲げた建物を書いても、読者にはその看板を見ただけではそこが何なのか分かりません。
本屋なのか薬屋なのか食堂なのか…とにかくその看板だけで読者にそこが何処なのか分からせようとしても無理です。
したがって、そこまでの展開とネーミングも大事です。
○○堂ではなく「○○新聞社」とすればそこが新聞社だと分かりますし、「○○薬局」とすればそこが薬屋だと分かります。
またコマの大きさや、そこが主要舞台なら台詞やモノローグなどにも活字で入れてそこが何処だか分かるようにした方が良いでしょう。
例えば「○○新聞社」という大きな看板をバーンと描いた上に、キャラクターが「ここが○○新聞社か…でっかい建物だな~!」など独り言をいうように台詞として活字で入れることでそこが何処だか、また大事な場所であることが読者に分かりやすくなります。
小さく建物の外観だけ描いても読み飛ばされると思っておいた方が良いです。
読者は自分が思うほど注意深く読んではくれません。
⑤は文字数を減らすために描き文字を上手に使いましょうということです。
漫画のコマ割は大体1ページに6コマくらいまで。
(しかしこれが読みやすく描くことに長けている人だと8コマくらい行けてしまいます)
そして次に注意しなくてはいけないのはネームの多さです。
ここでいうネームとはページ数ではなく、台詞やモノローグの文字数のこと。
やたら文字数が多いと読者はうんざりして読むのが嫌になってしまいます。
そこで描き文字に情報を割り振ることで、吹き出し内の活字を減らというテクを使います。
お話の中で重要度は低いけど、書いておいた方がいい情報を書き文字で添えるのです。
その書き文字は読み飛ばされてもお話の内容がわかるというのが前提ですが。
投稿作に書かれている書き文字は何故そこにその書き文字を書く必要があるのかを深く考えずに何となく書いているものが多いように見受けられます。
しかし書き文字一つとってもプロの原稿にはそこにその書き文字を書く理由がちゃんとあるものです。
なので書き文字についてはまた次回具体例をあげて解説しますね。
まとめ
ということで、読みやすい漫画にするには何に気を付けるべきなのかについて書いてみましたが、これはなかなか言葉で説明して分かるものでもなく…一番良いのは、原稿に入る前に友人知人や家族など身近な人にネームを読んで貰うことです。
初めにも書きましたが、面白い、面白くないはその人の好みに左右されるのでつまらないと言われても投稿者の段階ではあまり気にしなくて良いと思います。
しかし。
●ここどこ?
●この人って誰だっけ?
●これ誰の台詞?
●ここの意味が分からないんだけど…
など「わからない」と言われたことについてはネームで誰が読んでも分かるように直しましょう。
わからない、に好みは関係ありません。
読んでくれる人が前のページを読み返しながら時間をかけて読み進めていたら、
そのネームは読みにくい、わかりにくい、可能性が高いです。
デビューを目指すならそのまま原稿に進んでも良い結果には繋がらないので、何処が分かりにくいか聞いて指摘を受けた箇所は必ず直してから原稿に入りましょう。
他の投稿者に差を付けて頭一個抜け出すためにはそういう地道な作業が必要です。
以前にも書きましたが編集者はデビュー作にそこまでハイレベルなものは求めていません。
持ち込みにいってボロカス言われたとしても、絵が上手かったりネタが面白いと思えば頑張って最後まで読んでくれる編集者は一般の読者に比べたら遙かに優しい存在です。
しかしそれが雑誌を買ってくれた一般の読者だったら…
初めの数ページを読んで意味が分からないとか読みにくいと感じたら、読み飛ばして他の作品へ行ってしまいます。
(まあ…そうならないために商業誌の場合は掲載前に何度も何度も直すことになる新人さんが多いわけですが…)
読み飛ばされたのでは自分の作品には何の反応も来ません。
…つまり
アンケート取れない⇒2作目発表には編集部が慎重になりネームが通らない⇒なかなか掲載にたどり着けない…
という負のループに突入してしまう事態が起こり得ます。
ですから、ストーリーを練ったり、今風の作画を意識するのもいいし、迫力だったり絵の美しさだったりを意識するのも良いのですが、
全ては読みやすさの上でそういった要素が生きてくるのだという事を忘れないでくださいね。
読みやすい漫画を描ける力は確実にあなたの武器になります。
頑張ってください😊
応援しています。
コメント